Ricax Surroundings

りかさら。科学的な子育てネタ,ガジェットいじりなど。たまに走る。

さわっても熱くない灯りと温かい灯り~エネルギー変換の話

対 象:1歳~
準 備:特になし
その他:火傷に注意,長時間「電球」に触り続けないこと

 

既にクリスマスシーズンが過ぎてしまいましたが。街なかでLEDライトのイルミネーションを見かけたとき,息子に「さわってみてごらん」と声をかけてみました。

息子は,その短い数年の人生の経験からも「明るいものは熱い」と思っているらしく(正しい。まったくサバイバル的に正しい),「熱いからヤダー」となかなか手を出してくれません。

そこで,まず私が手を出してLEDライトに触れて「あちちっ,うそうそ大丈夫だよー」なんてやってみせます。すると,恐れながらもLEDライトに触れてみて,熱くないことがわかると「なあんだ熱くないじゃん」なんて言いながら,得意気に指先でライトをツンツンしていました。

f:id:ricax:20160105191150j:plain

また別の機会,街を歩いていると居酒屋の店外でメニューを照らしている電球が目につきました。20Wくらいの(消費電力が低いのであまり熱くならない)電球だったので,息子に「さわってみてごらん」と声をかけてみると,ふふふなんて得意気に笑いながら電球に触れた後,「あれっ?これは熱い,熱いよーー!!」と騒いでいました。

f:id:ricax:20160105191157j:plain

同じ「灯り」なのに,熱いものと熱くないものがあるって,こどもにとっては大発見みたいです。

ちょこっと解説

ここ10年ほとでLEDのイルミネーションが増えましたが,LEDと電球は光を出す原理がまったく異なります。

昔なじみの「電球」は,金属線を電流が流れるときに発生する熱の一部が「光」として放出される原理を利用しています。きちんと書くと,黒体の輻射が可視光領域に達するほどジュール熱が大きくなる高抵抗の金属を利用した,電気→熱→光へのエネルギー変換です。

これに対して「LED」は,半導体と呼ばれる材料に電圧をかけ無理やり電流を流すとき,電流の正体である「電子」と,電子の空席「正孔(ホール,特殊な半導体の中でだけ現れる)」がぶつかり合って発生するエネルギーを光に変えています。きちんと書くと,半導体のpn接合に順方向バイアスを印加したときに,キャリア(電子と正孔)が再結合するエネルギーが可視光相当になる,電気→光のエネルギー変換です。電球と比べて,途中に熱エネルギーを経ていないんですよね。だから,原理的に熱くなる必要がないのです。また,途中に熱エネルギーで放出されてしまう分がないため,電気エネルギーを効率よく光エネルギーに変換することが出来て,省エネで,つまりは電気料金が安くなるわけです。

その代わり。LEDの場合,放出するエネルギー…つまり光の色は,半導体の材料の構成で決まっているため,ひとつの材料からは決まった色しか出せません。昔(1960年代)は「赤色LED」の材料しか発見されてなかったのですが,そのうち「緑色LED」が出来て,1990年代に「青色LED」が出来るようになり,光の三原色RGBがそろって,いろんな色の表現ができるようになりました。

さっきwebで見たら,秋月電子では1個50円くらいで三色LED部品が売られていました。安いなー,そりゃ家庭の電気もLEDに置き換わるわ。こんな時代に生まれた息子は,そのうち「灯り」に「あたたかみ」を感じない世代になっていくのかも知れません。